東芝株主の反乱と様々なガバナンスのあり方

2021年6月29日火曜日

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東芝のガバナンス

先週25日開催された東芝の年次株主総会では、永山治取締役会議長の再任案が否決された。

それに先駆け、6月10日に公表された外部弁護士による調査報告書では、外国人投資家が議決権を行使できないようにするため、東芝の幹部・取締役と政府当局者が共謀していたことが発覚した。

東芝は報告書の公表を受けて、すでに幹部2人、取締役2人を退任させたが、25日の投票結果は、株主がこうした生ぬるい、小出しの改革では満足しないことを浮き彫りにした。

東芝の株主の約半分は、すでに外国人投資家によって占められている。

米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)やグラスルイスなど議決権行使助言会社が、永山氏の再任に反対するよう助言したことも、外国人株主の背中を押したとみられる。

東芝が株主から突きつけられている要求は、海外PEファンドによる買収提案の検討であり、ファンドが狙っているのは、東芝が保有する半導体メモリー大手キオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)の持ち株40%。

東芝はこれを真摯に検討せざるをえない状況に追い込まれている。

良くも悪くも、今や東芝は、こうした外国人株主の要求に、一つ一つ真摯に検討していかないといけないほど、経営陣が経営の手を縛られている状態となっている。


生命保険会社(相互会社)や信用金庫のガバナンス構造

一方で、日本では、大手の生命保険会社が相互会社という形態をとっている。

相互会社では、保険の契約者が保険料の一部分を保険会社の資本に相当する内部留保にあてて、経営の健全性を確保している。

つまり、保険会社の所有者は契約者ということになる。

したがって、株式会社でいうところの株主は、個々の契約者となっている。

しかし、大手の保険会社には契約者は何百万人とおり、それを全て相手にして、会社の最高意思決定をするわけにはいかない。

よって、契約者の中からより少ない人数の総代と選出し、総代会という機関を作り、株主総会のような最高意思決定機関としている。

信用金庫も近しい作りをしており、主に借り手の中から出資者を募り、その一部が総代となって、最高意思決定機関の総代会に出席する。


生保、信金に所有者によるガバナンスは効いているのか?

上記のようなガバナンス構造はあるものの、実際には、総代は、経営陣にプレッシャーをほとんどかけていない。

取締役や理事といった役員の選任も総代会で否決されることは皆無。

なぜなら、個々の保険契約者に保険会社の経営が分かるわけがないし、借り手が信用金庫の経営陣に強く出ることなどできないからである。

これにより、生保や信金の経営陣は、短期的な収益プレッシャーに晒されることなく、長期的なビジョンに立った経営を行うことができるとされている。

一方で、仮に経営陣が方向を間違ったときに修正を利かせる手段に乏しいともいえる。

生保、信金にガバナンスを利かせられるのは、社外役員、もしくは監督当局(金融庁など)くらいである。

社外役員は、大手の生保では導入している会社も多いが、信金では、そもそも導入していない場合も多い。そうなると理事長の天下となってしまう。


まとめ

東芝ほど、株主が自らの利益のために幅を利かせるのは、顧客や従業員といった、その他のステークホルダー不在の議論になるし、生保・信金のように、組織のオーナーが全く物言えないとなると、経営陣の暴走を止める手立てに乏しいのも、また問題となるので、一長一短がある。




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