【おすすめ本】日本の金融リスク管理を変えた10大事件 (藤井健司著 きんざい)

2021年5月13日木曜日

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  • 著者は、日本長期信用銀行を皮切りに、三和銀行、三和証券、UFJ銀行、三菱UFJグループ、あおぞら銀行、あおぞら銀行でリスク管理に携わってきたリスク管理のプロ。
  • 日本の金融機関のリスク管理を変えた10事件として、①第一次BIS規制導入、②VaRショック(2003年)、③大和銀行NY支店事件(1995年)、④1990年代の金融危機、⑤メガバンク誕生(2000~2002年)、⑥システム障害(2001、2002年)、⑦バーゼルⅡ導入、⑧個人情報保護法制定(2004年)、⑨金融再生プログラムと不良債権処理(2003~2005年)、⑩バーゼルⅢ(2009年~)、を挙げている。
  • 一例として、金融再生プログラムの例を見てみると、以下のように整理されている。
    • 金融再生プログラムの施策の中で、最もインパクトのあった措置は、繰延税金資産の計上の限定
    • それにより、りそなが過小資本、足利銀行が債務超過になり、大規模な公的資金の注入
    • SMFGはわかしお銀行との逆さ合併とゴールドマンからの増資、三菱は3000億円の公募増資、みずほは取引先に1兆円の嵌めこみ、を行うなど、メガバンクが大規模増資に走る。
    • 産業再生機構による大口問題先の外科手術
    • UFJの検査忌避&破綻、と時系列で整理
  • その上で、こうしたイベントがリスク管理に与えた影響として、
    • 債権管理を担保の処分価格に基づくのではなく、債務者が生み出すキャッシュフローに基づいて評価するDCF法(discount cash flow法)が導入されたこと、
    • 資産の劣化による資本不足の解消(=バランスシート調整)には、地道な利益の積み上げと増資が解決策であり、時間がかかるという認識が広まったこと、
    • 資本の質をきめ細かく確認し、金融機関の資本をTier1、Tier2といったレイヤーをもって考えるようになったこと(上記の繰延税金資産は質の低いTier2資産に分類される)
    などを挙げている。

  • このように、金融史上のイベントとそれに影響されたリスク管理上の新たな対応を対比して整理されており、金融再生プログラム以外の事件に関しても、実感を伴うものとして、大変読み応えがあるものとなっている。
  • 是非、ご一読をおすすめします。



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