【おすすめ本】よこどり 小説メガバンク人事抗争 (著者:小野一起 講談社 2020年)

2021年4月22日木曜日

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 1.概要

  • 主人公は、大銀行2つが合併してできた日本一の架空のメガバンクの広報部長
  • 設定は、逆転で上り詰めた持株会社社長。合併前もう一方の銀行出身で社長経験者の相談役、社長と相談役を頂点とする派閥抗争のなかで苦悩する、副社長、子銀行役員、経営企画部長、主人公広報部長など。
  • それに、マスコミ、新興フィンテック企業社長、巨大証券会社との合併、大手不動産会社への出向者の逆襲など絡んでくる。
  • 近年の金融業界を揺るがせている、スルガ銀行のシェアハウス問題、金融危機時の証券化商品、コーポレートガバナンス(相談役問題)、フィンテックの台頭などの話題が盛り込まれている。
  • そうした中でも、メガバンクグループの人事という謎に包まれた権力闘争が常に物語の中心に添えられていて読者の関心を引いている。
  • 主人公の広報部長の家族(妻・娘)の物語も申し訳程度に添えられているがメインではない。

2.おすすめ(驚愕の)ポイント
  • まず冒頭、主人公とFG社長との出会いの回想シーンで、社長(当時部長)が主人公に言った言葉が驚愕です。
  • 「君の手柄は、すべて私の手柄とする」「私の失敗は、すべて君のせいにする」「ただ心配する必要はない。君も君の部下に同じようにやればいい。それが銀行だ
  • それが銀行だ、って。これが本当なら日本のメガバンクは本当に恐ろしいと身震いしました。
  • あと、栗山という相談役が出てきますが、メガバンクでは、役員⇒頭取⇒FG社長と現役で上り詰めても、その上に、会長、顧問、相談役といったOBが出てきて、そっちを向いて仕事をしないといけないように描かれています。
  • 出身銀行の派閥もあって、はっきり言って、現役経営陣の仕事をしにくくしているだけの老害なだけにしかみえません。
  • 上下の緊張関係も凄く、タイトルよろしく手柄の横取り、責任の押しつけ合いがひどいので、主人公は結局社長とのやりとりを録音することで活路を見出すことになりますが、社内で録音というのも尋常じゃないと思いました。
  • 徹頭徹尾ダークなエピソードに溢れるメガバンクの内部を描いていますが、唯一、主人公の娘の彼氏が、それでもメガバンクに興味を持ち(それが人間社会だから逆に面白いと思うとのこと)、就職を企図するという展開は、もしかしたら、著者のメガバンクへの愛情を表しているのかもしれません。

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