【おすすめ本】火花 (著者:又吉直樹 2017年) 感動のラスト漫才!

2021年4月29日木曜日

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1.概要

  • 吉本のお笑いコンビ「ピース」の又吉直樹が作者。因みに相方の綾部祐二は現在NYで修行中。
  • 本作は、第153回芥川龍之介賞受賞作。
  • 全体として170ページくらいの短い小説。
  • 主人公の徳永(笑いの天才を目指す)と先輩芸人の神谷が交流しながら繰り広げる、笑いと人生の折り合いをつけるための葛藤が、お笑い芸人の著者ならではの視点で描かれています。

2.読みどころ!!

  • 本来は、上記のとおり、笑いと人生の折り合いの付け方に関する葛藤がメイントピックなんだとは思いますが、個人的には、徳永がコンビ(スパークス)を解散するときの、『最後の漫才』が本当に秀逸で、しかもガッツリ落涙してしまいました!
  • 以下、そのシーンを再現します。
    • 徳永世界の常識を覆すような漫才をやるために、この道に入りました。僕たちが覆せたのは、努力は必ず報われる、という素敵な言葉だけです
    • 相方「あかんがな!」
    • 徳永感傷に流され過ぎて、思っていることを上手く伝えられへん時ってあるやん。だからあえて反対のことを言うと宣言した上で、思っていることと逆のことを全力で言うと、明確に思いが伝わるんちゃうかなと思うねん
    • 相方「お前は最後まで、何をややこしいこと言うとんねん」
    • 徳永まぁやったらわかるわ。いくぞ
    • 徳永おい、相方。お前はほんまに漫才が上手いな!
    • 相方「おう。いや喜びかけたけど、これ思ってることと反対のこと言うてんねんな」
    • 徳永一切噛まへんし、顔も声もいいし、実家も金持ちやし、最高やな
    • 相方「腹立つわこいつ」
    • 徳永天才!天才!
    • 相方「ど突き回したろか!」
    • 徳永だけどな、相方。そんな天才のお前にも幾つか大きな欠点があるぞ!
    • 相方「なんや」
    • 徳永まず部屋が汚い
    • 相方「しょぼいねん!確かに部屋は綺麗にしている方やけど、もっとあるやろ!」
    • 徳永彼女がブス
    • 相方「いや、嬉しいけど、それ俺のことと違うやん!」
    • 徳永相方が素晴らしい才能の持ち主!
    • 相方「はぁ?」
    • 徳永そんな、素晴らしい才能の天才的な相方に、この十年間、文句ばっかり言うて、全然ついてきてくれへんかったよな!
    • 相方「なに言うてんねん」
    • 徳永そんなお前とやから、この十年間、ほんまに楽しくなかったわ!世界で俺が一番不幸やわ!
    • 徳永ほんで、客!お前らホンマに賢いな!こんな売れてて将来性のある芸人のライブに、一切金も払わんと連日通いやがって!
    • 徳永お前ら、ほんまに賢いわ。おかげで、毎日苦痛やったぞ。ボケ!
    • 相方「おい、口悪いな・・・」(相方この時点で号泣)
    • 徳永僕の夢は子供の頃から漫才師じゃなかったんです。絶対に漫才師になんて、ならんとこうと思ってたんです。それがね、中学時代にこの相方と出会ってしまったせいで、漫才師になってもうたんですよ。最悪ですよ!そのせいで、僕は死んだんです。こいつが、僕を殺したようなもんですよ。よっ、人殺し!
    • 徳永たまにね、僕たちのことを凄い褒めてくれる人がいるんですよ。それが、凄く嬉しくてね。人生を肯定してくれるような喜びを得られるわけですよ。でもね、それに水を差すような奴らがいてね、それが、お前ら!
    • 徳永お前ら客は、スパークスは最低だ!見たくもねぇ!とか言って僕の人生を否定するわけですよ。ほんまに大嫌い!
    • 徳永僕たちスパークスは、今日が漫才をする最後ではありません。これからも、毎日皆さんとお会いできると思うと嬉しいです。僕は、この十年を糧に生きません。だから、どうか皆さんも適当に死ね!
    • 徳永死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!
    • 相方「やかましいわ!」
    • 相方「お前な、暴言吐きまくって、お客さんと相方泣かせて、これのどこが漫才やん!漫才というのは、お客さんを笑わさなあかんねん!」
    • 徳永ほんなら、最後の最後に常識を覆す漫才ができたってことやな
    • 相方「やかましいわ!」
    • 徳永お前も、この漫才の最後に言うことないんか?
    • 相方「相方!お客さん!僕は皆さんに全然感謝してません!」
    • 徳永お前、最低な奴やな
    • 相方「いや、俺も反対のこと言うたんや。わかるやろ!」
    • 徳永お前はほんまに漫才が上手いなぁ
    • 相方「もうええわ!」
  • この漫才、めちゃくちゃ凄いと思いませんか?僕は読みながら感動で泣きまくってしまいました。
  • 更に実際の小説では、こうした会話のやりとりの合間に、主人公・徳永の心の描写が入ります。徳永の「思い」の部分が、読者の心への訴えを更に力強くしています。
  • 是非、皆さんにも一度手にとって読んでみたもらいたいです!


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